2009.02.01
大切な食べ物
久しぶりに阿部なをさんの【葱とわかめと油揚げ】という料理の本を開きました。1988年の出版ですが 巻頭の言葉を読み 改めて深くうなずくような気持ちになりました。20年以上も前に書かれているのに、今になって、ますます大切な教えのように思います。途中抜粋ですが御紹介いたします。
魚は真ん中のいいところだけが美味なのではなく、それぞれの部分に味のちがいがあり、その活用に思い至るとき、ひとつの眼がひらかれます。野菜類の葉も茎もあるときは根も、それぞれに別な味のあることに心をくだいてやることは万物への愛情であり、もののいのちを知ることです。捨てられるべきものを生かすにはそれを助けるための余計な手間と時間がかかります。わずらわしいと思ったらきりのない三度の食事は大変なことですが、ていねいに生きるということは、顔をしかめて長い時間働くことではなく 限られた時間に、疲れたときでも別な神経をのばして、運動のつもりで料理をつくりだすと、眠っていたところが眼をさまし、体のバランスが回復します。そしていつの間にか背筋がのびているのです。
豊かになりすぎて、あれも良い これもよいと流されっぱなしで何を選んでいいのやら 自分の味も持たないままにすぎているのは、本当の食生活の進歩でしょうか。
どこにもないめずらしいものへの憧れはだれにでもありますが、それが無分別に続くことは本当の生きる喜びをもたらしましょうか。私はそんなとき何も言挙げしない自然のもののいのちの愛しさに、ふと我にかえります。
安部なおさんは明治44年に青森に生まれた方で古きよき日本の料理の心を伝えた方です。
私達は食べ物をつくる仕事です。郷土料理や地元の食材からも教えられることばかりです。改めて大切な食べ物のことを考えています。