2009.06.01
はじめの一歩
「雪つつみのさんま」は 私たちが発明したのではありません。卯の花漬けという郷土料理で、この地方にずっと古くから伝わるものです。
昭和の初めから終わりごろまで斉吉魚問屋は漁船の回船問屋業一筋で来たのですが平成元年から食品の製造もすることになりました。
斉吉のおばあさんの得意料理で船の船頭さんたちへ差し入れをしていたさんまの卯の花漬けを仙台の百貨店の部長さんが気にいってくださり売ってみないかと声を掛けてくださいました。 仙台の百貨店ではじめて 自社商品の販売をすることとなりました。
鮮度抜群のさんまはすぐにそろえられます。これだけは、当時も今も自信があります。次は豆腐のおからです。ありとあらゆる豆腐屋さんのおからを集めて試しました。当時ごみ袋は中の見えない黒い袋でしたが、その袋にそれぞれの豆腐屋さんの名字を書いて冷凍業者さんに保管を頼みました。黒い袋がどんどん増えて出したり入れたりするので、業者さんに「なんだが怪しいものでねぇがと心配してだよ」と後で笑われました。おばあさんの味をベースに何度も試作を繰り返し、販売に備えました。いよいよ販売の日がきました。純夫さんは乗用車に後ろが見えなくなるくらい荷物を積んで出発しました。携帯電話のない頃ですから、いてもたってもいられない思いで閉店後の電話を待ちました。が、昼過ぎに電話が入りました。
「たいへんだ・・お客さんが、みんな卯の花漬けを口に入れたとたん、すっぱい・・・・って顔しかめんだ 呑み込むのに辛そうな顔する人もいる・・・」びっくりしました。体中の血が逆流したように感じました。この味と決めたものにしたはずなのに・・大慌てでしたが現場にいる純夫さんはもっと大変です。すぐに酢加減を直そうということになり、その日のうちに作り直し、軽トラにシートをかぶせ気仙沼から運びました。閉店後二人で商品を交換しました。
それから後もほんの少しづつしか作れなかったのですが、何年かたってから「この卯の花漬け美味しいから何か名前つけてどこか品評会にでも出したら」そう言ってくださったお客様がいました。不思議なことですがその方は斉藤純夫さんとおっしゃいました。(うちの社長とすっかり同じ名前です)現在「雪つつみのさんま」と名前のついた卯の花漬けは、水産庁長官賞を頂き 鮮度の良いさんまに加え、みやぎシロメ大豆100%の豆腐おからを使わせて頂いています。さんまの余分な脂を甘酢のおからがすい取りさんまもおからもさらに美味しくなる先人の知恵です。