2008.11.01
唐桑御殿
先日 市内の唐桑地区 崎浜の『唐桑御殿』とよばれるお宅におじゃましました。晴天の日の唐桑の海は それは、それは見事です。澄んだ真っ青な空の色を映し、さらに深い藍色の中に緑色を帯びた海の色を ぜひ眺めてください。深呼吸を何度もしたくなるような美しさです。水平線を望む外海はもちろんですが 入り江から対岸の山と海を眺めるのも唐桑ならではの景色です。
石垣の上に建つ『唐桑御殿』は大きな黒瓦屋根のお宅でした。
我が家の柱が 三本分はゆうにある太い梁、天井板はすべて無垢の秋田杉とか・・・
十畳もある(おがみ)と呼ばれる部屋から 縁側の戸を大きく開くと 目の前に太平洋が開けます。まるで天下を取った気持ちにさえなる豪快な眺めです。
そして圧倒的に心惹かれるのは 部屋の端から端まである立派な神棚です。唐桑は古くから優秀な漁師を育てたところです。何ヶ月も海の上で漁をするお父さんを待ちながら 畑や田んぼを守り、子供を育てる。「航海安全」「大漁満足」を祈る暮らしがあります。海の上で家族とはなれ仕事をする 勇敢で やさしい男の人がいます。嬉しいときも 悲しいときも 神棚に手を合わせて祈る 明るく 辛抱強い女の人がいます。
家を留守にするお父さんは、自分がいない分家族を大きな家で守りたい。
いつも狭い船室で休むお父さんに 家に帰ったときは大きな座敷で休んでもらいたい。
祈りと思いやりのこもった海の男の甲斐性と心意気が唐桑御殿です。
ちなみにおがみの奥には別に座敷がありさらに奥座敷まである家もあります。いずれも十畳十二畳のおがみや座敷は普段の暮らしには使わず、大漁祝いやご祝儀 不祝儀などの人寄せのときに使われます。奥座敷を寝室に使う場合があってもお年寄り(偉い人)が使います。
家で作ったうんまい野菜のつけもの 手作りのがんづき でお茶をごっつぉになりました。
唐桑地区には 大きな瓦屋根の唐桑御殿と呼ばれる立派な家での地道な暮らしがあります。