2009.03.01
夢見る【あざら】
今年は 地元の蔵元『男山酒造』さんから貴重な大吟醸粕をいただいて、【あざら】を作ります。
【あざら】は気仙沼だけの郷土料理です。似た感じの料理で近隣に【おここ煮】というのがあります、使う材料は同じでも、まったく雰囲気の違うもので、驚きました。おここ煮は古漬けのさらさらの煮物 【あざら】はそれに比べるととろっとしてややクリーム状です。
まずは 白菜の古漬け。
乳酸発酵してやや酸っぱくなったものを使います。次に魚の「あら」です。目抜けや吉次を使いますが、この時期脂がのっているめかじきを使う家もあれば缶詰めのシーチキンを使う家もあります。
そして 「酒かす」です。
普通に流通している酒かすを使うのですが、今年は大吟醸粕を使います。
吟醸粕は もちろん純米吟醸酒を絞った粕ですが、「粕歩合」も違うのだそうです。
もろみを絞り清酒と粕に分けますが、普通酒を絞るときは粕の出る割合が、20から30パーセント これが大吟醸になると40から50パーセント以上も粕が残るように
つまり圧力をかけすぎないようにさっと絞るのだそうです。
半分しか絞らない吟醸酒の粕ですから、それだけスプーンですくって食べても、鼻からふんわり抜けるフルーティーな香りとともに美味いのです。ほかの調味料はほとんど使わず作ることができました。やめられなくなる味です。
【あざら】はすべて地元にある食材を使います しかも年を越して酸っぱく白菜漬けとしては家族に人気のなくなったものや 魚のあらです 食べ物を大切にする再生おかずなのに ものすごく自己主張のある独特の味 他に無い自慢の郷土料理です。
映画『オーシャンズ13』のなかでアルパチーノが「さきぃーくぼたぁ」(越後の銘酒 久保田)と言って日本酒で乾杯するシーンがありますが、世界的日本食ブームの中でわが町気仙沼の風土で育った【あざら】がいつかインターナショナルとなり、アルパチーノがthis is azaraなんて言うシーンを夢見るのです。