2007.11.01
福来旗
秋晴れの気仙沼 真っ青な空に五色の大漁旗が、いっそう輝く季節です。ひんやりした空気に海からの冷たい風が吹きより透明感を増しているように思います。
気仙沼では、大漁旗のことを願いをこめて「福 来る 旗」と書いて「福来旗;ふらいき」と呼びます。英語のフラッグが語源だということも言われています。
福来旗は新造船を建造したときに、その新造船にかかわる業者さんから、船主さんに贈られる物で、デザインは様々ですが、大海原に出漁する新船を飾るにふさわしいよう、どれもはっきりとした鮮やかな五色です。
畳3枚分はゆうにある大きな旗は大漁と書かれ次に大きく船名がきます。その下に贈り主である業者さんの屋号や社名が入ります。
お相撲さんの化粧まわしと同じで応援する周囲から贈られる、誇らしく気合のこもった大切な旗です。ですが実は新船の出船に賑々しく船を飾る何十枚もの福来旗はその後船に掲げられることはありません。その後出入港のたびに掲げられるのは、おもて(船首)に日の丸の旗と船主の船名屋号旗、そして とも(船尾)に船頭さんの旗と魚問屋の旗だけなのです。港の心意気というのでしょうか。一度きりのためのたくさんのそして大切な輝く五色の旗なのです。
最近 我が家で昭和30年代の古い福来旗が見つかりました。福島県いわき市の第23日康丸へ、斉吉魚問屋が贈った旗です。魚問屋の旗はずっと船に掲げられるものなので私たちの手元にあることはないのですが、端が千切れています。長い間出入港のたびに掲げていただき、ちぎれたため新しいものを作って贈り、先の旗を戻したためと思われます。
先代も先々代もそして今も、出船する雄姿に感激の中、万感の祈りを込めて誇らしく見上げる福来旗です。