2023.10.13
2023年10月|おにぎりと牛乳
秋の朝冷えた空気を吸うと、思い出す。
朝起きると一升五合のガス窯に湯気を立ててご飯が炊き上がっています。
鍋で沸いたお湯の中には瓶の牛乳が5本温められていて
今日も忙しいのがわかります。
母が梅干しの入ったおにぎりを十くらい握って
包装紙に2つずつくるんだら 私の出番。
小学校の高学年から高校ぐらいまでだったか、
あーもうーっ暗い気持ち、私は市場が嫌い
手提げ袋に温めた牛乳とおにぎりを入れて
自転車で300mくらい先の魚市場へ届けます。
気仙沼魚市場、当時も場内は700mほどあったと思います。
市場は急いでいるおんちゃんでいっぱい
場内は柱番号がふってあって 今朝水揚げする船は何番の柱とわかるときもあるけど、
動き回る父か会社の誰かを見つけて、おにぎりと牛乳を渡さなければなりません。
大概すぐには見つからず、学校に行く時間が近づいて
泣きたくなる時もあります。
会社の事務員さんはまだ出社しない6時台、
母は事務所で次の出漁準備の電話連絡に追われています。
この時期市場内の食堂にも行けない忙しさ、
いよいよ見つからないときは斉吉の軽トラックを見つけて置いてくるけど、
ようやく会社の人に渡せたらミッション終了。
秋から冬にかけて毎日のように続きました。
当時こんなに嫌だった仕事に、ひとつも工夫をしなかったことに呆れる。
何かちょっとでも、スムーズに届けられる工夫を考え、やってみることが
あのころの私にあれば、それは楽しいことに変わる種になったはずです。
私はその後も長い間市場の魅力に触れようとしませんでした。
種はいつ、どうやって撒くんだべね